スタエフ連動企画「文章読本紹介、の紹介」の第十三回。当該スタエフはこちら。
今回紹介する本はこちら。
現代日本文学の巨人、筒井康隆による短篇小説指南。この本はそのしばらく入手困難な状態が続いていたものに章を追加して再販した増補版として2016年に出たもの。追加された章では氏の『繁栄の昭和』を取り上げ、どのような手法を用いて書いているかをご本人が解説している。
小説とは何をどう書いても良い文学形式である、という氏の基本姿勢はここでも変わらず、幅広い実例を挙げながらその自由さを紹介している。そういう意味で「こう書けば良い」といった種類のハウツー本ではなく、どちらかというと短篇の読み方指南のような要素の方が強い。
スタエフのラストで紹介した『ジャックポット』はこちら。
齢86歳にしてまったく衰えるところを知らない恐るべき言語感覚。若い作家よりもはるか前を走り続けるその迫力に圧倒される。「小説とは何をどう書いても良い文芸形式である」を誰よりも実践しておられる。実際のところ、ここで紹介した『短編小説講義』などよりも筒井翁の短篇作品を読む方がはるかに得るものは大きい。
最近文庫化されたこれ。
これ一冊読むだけでも、見たこともないような短篇小説に度肝を抜かれることだろう。氏はその六十年にも及ぶキャリアの中で、小説とはかくも自由であるということを体現し続けてきたのである。彼の前にあっては、文章読本などというものは全部ただの読み物にすぎず、それに沿って小説を書こうとするなど愚の骨頂なのである。
世界にはかくも自由な小説があふれているのだ。
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